全人類で一斉にジャンプしたら、地球は凹む? もしもの地球大実験

詳細

• タイトル: 全人類で一斉にジャンプしたら、地球は凹む? もしもの地球大実験 de 荒舩 良孝
• ISBN: 4800245680
• ファイル名: 全人類で一斉にジャンプしたら-地球は凹む-もしもの地球大実験.pdf
• 発売日: 2015/10/24
• ページ数: 250ページ ページ
• 出版社: 荒舩 良孝

本書のタイトルは扱うトピックの１つであり、必ずしも本書の趣旨を具体的に表現するものではない。どちらかと言えば、副題の『もしもの地球大実験』がこれに近いと言うべきだろう。このページの「商品の説明」には、「『もしも』の科学実験」として「 北極の氷でかき氷は何人分作れる？地面をスコップで掘ってから何日で核にたどり着く？乗り遅れた新幹線に自転車で追いつくためには、ペダルを１秒に何回漕げばいい？ピストルで撃たれても、胸ポケットにハンカチを何枚詰めたら助かるか？」といったような「確かめようもない危険な疑問……奇想天外な疑問」について、諸条件や環境を抽象化・簡略化して、科学（物理）的に検証・考察ないし思考実験することで「地球の意外な秘密」を探ると言うものである。但し私の手元の本書は「２０１５年１１月７日第１刷」ながら、右に紹介されているトピックの「ピストルで撃たれても、胸ポケットにハンカチを何枚詰めたら助かるか？」は見当たらず、「ピストル」に注目すれば「ピストルで撃たれても映画俳優のように避けるにはどれくらいの反射神経で動けばいい？」（32頁以下）がある。各トピックは前述のように、本質的な原理・現象の科学的解説と言う目的・趣旨の一貫性から、思考実験や科学的推定にあたっては諸条件・環境等につき一定程度の抽象化・捨象化を明示的・暗黙的な前提にしている。これについて縷々指摘するのは些か野暮とは思うが、多少設定や抽象化の不充分または無理なものも散見される。例えば「おむすび」を山の斜面で転がしての時速の計算では（18頁以下）、時速「約８６４ｋｍ」と結論するが、「斜面とおむすびの間の摩擦や空気抵抗」を考慮する以前に、通常の炊いた米の「おむすび」自体が途中で崩壊するだろうと思う。同様に「レゴブロック」（「レゴ」は商標のようである）で実物大のスカイツリーを作るピース数は「およそ６５８４億」個強とするが（38頁以下）、「レゴブロック」の自重と強度等を捨象しているのか（恐らく考慮していないと推察されるが）不明である。かかる各トピックの検証・思考実験上の条件・環境の設定（抽象化）を細かく糺すのは本意ではないが、「ユーラシア大陸」の徒歩横断時間（56頁以下）のトピック中で、日本人探検家が「チリ南端のナバリーノ島」から「アフリカのタンザニアまでの５万３０００ｋｍ」を「腕力と脚力のみで移動する旅を敢行した」とあるも、北米大陸からユーラシア大陸間（恐らくアリューシャン列島横断ルートか？）の移動手段の説明のないのが気になる。個人的には全人類を１ヶ所に集めた時の所要面積（44頁以下）、筆圧や芯の硬度の条件が不明だが「鉛筆１本」で書ける文字数（124頁以下）などが面白い。前述のように（厳密に検証するならば）計算・思考実験における諸条件・環境等の抽象化・捨象化の不充分や曖昧な設定が気になるが、全体としては意表を突くトピックも散見され面白く、また単行本ながらペーパー・バック体裁によるコスト・パフォーマンスの配慮（本文約２３０ページ・８４２円）は評価できよう。